概要
Excelで奇数列を並べ、隣り合う奇数から作った分数を順に掛けていくと、部分積が0.41421356...へ近づいていくことがあります。
この値は√2 - 1と一致します。
この記事では、まず数値実験としてExcelで見える動きを確認し、そのあとで無限積として式を整理します。
最後にガンマ関数と反射公式を使い、収束先が√2 - 1になる流れを追います。
Excelで見えた数値の動き
発端は、奇数列を少し特殊な順番で分子・分母に分け、それを掛け続ける計算です。
1/3 × 7/5 × 9/11 × 15/13 × ...
通常の1/3 × 3/5 × 5/7 × ...のような並べ方では、値の動きは別のものになります。
今回の検討では、奇数列を8n+1、8n+7、8n+3、8n+5という形で組み替え、次の無限積を見ています。
P = Π ((8n + 1) / (8n + 3)) × ((8n + 7) / (8n + 5))
Excelで項数を増やしていくと、計算値が徐々に0.41421356...へ近づきます。

この段階では、まだ「そう見える」という数値実験です。 数学的に言い切るには、無限に続く積の収束先を式で確認する必要があります。
無限積として見る
部分積をn個までで止めたものを考えると、Excelでは次のような確認ができます。
- 項数を増やすほど値の変化が小さくなる
- 上下に振れながら
√2 - 1へ近づいていく 0.41421356...の近くで安定する√2 - 1との差が小さくなる
ここで重要なのは、Excelの計算結果は証明そのものではなく、証明したい形を見つけるための入口だという点です。 開発でも、まず具体的な出力を出してから、なぜそうなるかをコードや式で確認することがあります。 今回も同じで、Excelで見えた値をもとに、積の形を数学の公式で扱いやすくします。
ガンマ関数で積を整理する
奇数や分数が続く積は、直接そのまま扱うと見通しが悪くなります。 そこで、階乗を拡張したようなガンマ関数を使うと、連続した積をまとめて表せます。
まず各項から8をくくると、積は次のように整理できます。
P = Π ((n + 1/8)(n + 7/8)) / ((n + 3/8)(n + 5/8))
ガンマ関数には、ざっくり言うと次のような役割があります。
連続した積や階乗に似た形を、1つの関数の比として表す
これにより、奇数列から出てくる分数の積を、ガンマ関数の比へ変換できます。 今回の形では、次の比にまとまります。
P = Γ(3/8)Γ(5/8) / (Γ(1/8)Γ(7/8))
初心者向けには、ここでは「長い掛け算を、あとで公式にかけやすい形へまとめる道具」と捉えると十分です。
反射公式で三角関数へ落とす
ガンマ関数で整理した式は、さらに反射公式を使うことで三角関数の値へつながります。
反射公式は、ガンマ関数どうしの積をsinの式で表す公式です。
今回の流れでは、最終的にtan(π/8)という形が現れます。
途中の対応だけ書くと、次のようになります。
Γ(3/8)Γ(5/8) = π / sin(3π/8)
Γ(1/8)Γ(7/8) = π / sin(π/8)
P = sin(π/8) / sin(3π/8)
= sin(π/8) / cos(π/8)
= tan(π/8)
そして三角関数の半角公式から、次が成り立ちます。
tan(π/8) = √2 - 1
つまり、Excelで観察していた0.41421356...は、偶然ではなく√2 - 1へ収束していると説明できます。
Excel実験と証明をつなぐ意味
この例の面白いところは、Excelでの小さな検算が、数学的な構造の発見につながる点です。
最初からガンマ関数や反射公式だけを見ると難しく感じます。 しかし、先にExcelで部分積を並べておくと、次のように段階を分けて理解できます。
- 奇数列から分数の積を作る
- Excelで部分積を計算する
√2 - 1に近づくことを見つける- 無限積として式を整理する
- ガンマ関数と反射公式で収束先を確認する
これは、開発ノウハウの記事化でも使いやすい進め方です。 まず動くものや出力を見て、そこから再利用できる考え方、式、実装パターンへ落とし込むと、後から読み返しても使いやすい知識になります。
注意点
- Excelの数値計算は、あくまで有限個の項までの近似です。
- 項数を増やすと値は安定しますが、丸め誤差や表示桁数の影響は残ります。
√2 - 1に近いことを確認するだけでは証明にはならないため、無限積としての式変形が必要です。- ガンマ関数や反射公式は初見では難しいので、記事や説明図では「長い積を整理するための道具」として段階的に扱うと理解しやすくなります。
参考
- NIST Digital Library of Mathematical Functions - Gamma Function
- NIST Digital Library of Mathematical Functions - Reflection Formula
まとめ
奇数列から生まれる積をExcelで検算すると、√2 - 1へ近づく様子を直感的に確認できます。
そこから無限積、ガンマ関数、反射公式へ進むことで、単なる数値の一致ではなく、なぜその値になるのかを説明できます。
開発や記事化の視点では、Excelの数値実験を入口にして、再利用できる数学的な考え方まで残しておく好例です。
