Softex CelwareTech Blog
設計思想2026-06-14

エクセルでできることは、エクセルに任せた方がいい|シフト管理から考える業務改善

介護施設のシフト管理を例に、すぐWebアプリ化する前にExcelで仕組み化できる範囲を見極める考え方と、ExcelとWebアプリの判断基準を解説します。

設計思想Excel業務改善シフト管理現場DX

介護施設や福祉施設などの現場では、シフト表の作成や勤務管理をExcelで行っているケースが多くあります。

職員数や勤務形態が増えると、シフト表の作成に時間がかかり、「Excelでは限界があるのではないか」「Webアプリ化した方がよいのではないか」という話になりやすくなります。

もちろん、Webアプリ化が有効な場面はあります。ただし、すべての業務をすぐにWebアプリへ置き換えることが、最適な業務改善とは限りません。

大切なのは、Excelが悪いと判断する前に、Excelで仕組み化できる範囲を確認することです。

Excelによるシフト管理の仕組み化とWebアプリ化の判断を整理した解説図
Excelをやめる前に、日付表示、入力規則、条件付き書式、人数集計などで改善できる範囲を確認します。

エクセル業務が大変でも、すぐWebアプリ化すればよいとは限らない

シフト管理では、次のような問題が起こりがちです。

  • 毎月、日付や曜日を手作業で作り直している
  • 早番、遅番、夜勤などの表記が担当者によって異なる
  • 日ごとの必要人数を目で数えている
  • 特定の担当者しか表の直し方を知らない
  • 職員や勤務区分が増えるたびに調整が必要になる

こうした状態では、Excelそのものが原因に見えます。しかし、実際には、手入力や目視確認に頼ったままで、Excelの機能を十分に使えていないことも少なくありません。

Excelには、入力、集計、判定、色分け、印刷を一つのファイル内で組み合わせられる強みがあります。まずは現在の表を、誰でも同じルールで使えるように整えるだけでも、作業負担を大きく減らせます。

Webアプリ化で起こる新しい依存にも注意する

Webアプリ化すると、画面を分かりやすくしたり、スマートフォンから入力したり、複数人で同じデータを扱ったりしやすくなります。

一方で、現場で簡単に変更できていたものが、開発者へ依頼しなければ変更できなくなる場合があります。

  • シフト種別を一つ追加したい
  • 職員一覧や並び順を変更したい
  • 人数不足の判定条件を変えたい
  • 印刷時の列幅や表示項目を調整したい
  • 施設独自の例外ルールを追加したい

設定画面や変更手順が用意されていないWebアプリでは、Excelの属人化を解消した結果、今度はアプリ依存化仕様変更の外注化が起こる可能性があります。

Webアプリ化が悪いのではありません。業務変更の頻度や、現場で変更したい範囲を確認せずに置き換えることが問題です。

まず考えるべきはExcelの仕組み化

シフト表であれば、Excelの基本機能を組み合わせるだけでも、次のような仕組みを作れます。

  • 年月を入力すると、その月の日付と曜日を自動表示する
  • 職員一覧を縦方向に並べる
  • 早番、遅番、日勤、夜勤、休みなどを選択式で入力する
  • シフト種別に応じてセルの色を変える
  • 日ごとの勤務人数を自動集計する
  • 必要人数に足りない日を赤く表示する
  • 現場に合わせた印刷レイアウトを作る
  • 必要な操作だけをマクロボタンで補助する

この段階で業務上の問題が解決するなら、新しいシステムを導入するより、低コストで柔軟な改善になります。

また、Excel上で業務ルールを整理しておくことは、将来Webアプリ化するときにも役立ちます。入力項目、判定条件、集計方法が明確になるため、要件定義の土台として利用できるからです。

シフト表の改善で役立つExcelの基本機能

日付計算で毎月の作り直しを減らす

DATEEOMONTHWEEKDAYTEXTなどの関数を使うと、指定した年月から日付、月末日、曜日を自動表示できます。

年月を一か所変更するだけで、28日、29日、30日、31日の違いを反映できれば、毎月の日付欄を手作業で作り直す必要がなくなります。

入力規則で表記ゆれを防ぐ

手入力では、「早番」「早」「早出」のような表記ゆれが起こります。表記が揃っていなければ、正しく人数を集計できません。

Excel入力規則のリストを使えば、担当者は候補から選ぶだけで入力できます。入力ミスを減らし、後続の集計を安定させるための重要な仕組みです。

COUNTIF・COUNTIFSで人数を数える

COUNTIFを使うと、ある日の列に「早番」が何個あるかを数えられます。複数条件が必要な場合はCOUNTIFSを使います。

これにより、日ごとの早番、遅番、夜勤などの人数を自動集計できます。必要人数との差分も計算しておけば、人数不足の確認を目視だけに頼らずに済みます。

ただし、実際の人員配置基準や労務上の条件は、資格、勤務時間、休憩、連続勤務なども関係します。単純な人数集計だけで適否を判断せず、必要な条件を別途整理する必要があります。

条件付き書式で問題箇所を見つけやすくする

Excel条件付き書式を使うと、「休みはグレー」「夜勤は紫」「人数不足は赤」といった色分けを自動化できます。

色は飾りではなく、確認作業を助ける情報です。表を開いた瞬間に問題箇所が分かれば、見落としを減らせます。

印刷・PDF出力はExcelの強み

シフト表は、紙で掲示したり、PDFで配布したりすることがあります。Excelなら、列幅、行高、余白、印刷範囲などを現場側で調整しやすくなります。

Webアプリでは、画面表示とは別に印刷用レイアウトを実装する必要があります。紙の運用が残る業務では、Excelの調整しやすさが大きな利点になります。

必要な部分だけVBAで補助する

すべてをマクロで作り込む必要はありません。関数、入力規則、条件付き書式で基本部分を整えたうえで、繰り返し操作だけをExcel VBAで補助する方法が現実的です。

たとえば、入力漏れチェック、PDF出力、月替わり処理、シフト入力ボタンなどを追加できます。入力規則をさらに使いやすくする例として、入力規則リストを矢印ボタンで切り替える汎用プロシージャもあります。

Excelを活かすメリット

Excelで仕組み化する主なメリットは、現場で変更しやすいことです。

観点Excelを活かすメリット
引き継ぎ多くの人が基本操作を理解しており、ファイルを開いて確認できる
変更職員一覧、勤務区分、表示形式、印刷レイアウトを調整しやすい
費用既存環境を利用し、小さく改善を始めやすい
帳票印刷、PDF、集計表、転記との相性が良い
導入現在の業務に近い形で始められる

ただし、Excelで作れば自動的に引き継ぎやすくなるわけではありません。複雑な数式やVBAを説明なしで組み込むと、Excelでも属人化します。設定場所を分ける、数式セルを保護する、操作手順を残すなど、他の人が理解できる設計も必要です。

Webアプリ化を検討した方がよい場面

この記事は、Webアプリ化を避けるべきだという主張ではありません。次のような要件が重要なら、Webアプリやデータベースを検討する価値があります。

  • 複数人が頻繁に同時入力する必要があり、Excelの共同編集では運用しにくい
  • スマートフォンからの利用が中心になる
  • 複数拠点で同じデータを管理したい
  • 利用者ごとの権限管理が必要
  • LINE、メール、外部サービスとの連携が必要
  • 長期的にデータを蓄積し、検索・分析したい
  • Excelファイルの共有や版管理に限界がある

それでも、いきなり画面を作り始めるのではなく、まずExcelで業務フローや判定条件を整理すると、必要な機能が見えやすくなります。

現場DXの理想と現実でも解説しているように、技術的に実現できることと、現場が本当に使いやすいことは別です。Excel、Webアプリ、スマートフォン入力を目的に応じて使い分ける必要があります。

ExcelかWebアプリかを判断する確認項目

確認項目Excelが向きやすいWebアプリが向きやすい
利用人数少人数・担当者中心多人数・同時利用
変更頻度現場ルールが頻繁に変わる仕様を統一して運用できる
利用端末PC中心スマートフォン・複数端末
帳票印刷や自由なレイアウトが重要データ共有や検索が重要
管理方法ファイル単位で管理できる一元管理・権限管理が必要
外部連携少ない通知やAPI連携が必要

実際には、ExcelかWebアプリかの二択ではありません。Excelで入力・帳票作成を行い、共有データだけをデータベースで管理するなど、両方を組み合わせる方法もあります。

関連記事・学習ページ

まとめ

Excel業務が大変になると、すぐに「ExcelをやめてWebアプリ化した方がよい」と考えがちです。

しかし、問題はExcelそのものではなく、入力、集計、判定、印刷が仕組み化されていないことかもしれません。シフト表であれば、日付計算、入力規則、COUNTIF、条件付き書式などの基本機能だけでも、実用的な仕組みを作れます。

大切なのは、選択する順番です。

ExcelでできることはExcelに任せる。そのうえで、同時入力、スマートフォン利用、外部連携など、Excelでは難しい部分だけをWebアプリ化する。

この順番で考えることで、現場で直しやすく、将来の変更にも対応しやすい業務改善を進められます。

この技術で業務改善しませんか?

Excel VBA・GAS・Webアプリで業務の自動化ツールを開発しています。 「こんなことできる?」というご相談だけでもお気軽にどうぞ。

無料相談はこちら →